介護道楽・ケア三昧

■心医者徒然談義・職場のメンタルヘルスを考える（第2話）
上司の役割　N0.2
東北ジャーナルH16年9月号

…さて､実際に職場で部下を育てるコツは、ロを出すか、任せるか、の見極めを上手くつけることです。私なぞは生来の短気がたたって､ついついロを出しがちですが、是非とも改めたいと思っています。皆さまは如何でしょうか。

　前回、上司の役割は、組織の「目的」にそって人をまとめ、動かし、育てること、と定義し、まず自分の属する組織の目的は何かを考えてみることが、上司の役割を整理するきっかけになることを指摘しました。今回は、人をまとめる、動かす、育てるコツについて考えてみます。

【まとめる】

さて、人を「まとめる」には、まず一人ひとりの居場所や役回りを分かり易く示すのがコツです。たとえば結婚式や葬式は、座る場所とスピーチの順番が決まっています。そのことがセレモニーの目的遂行を容易にしています。

ある部長は、就任してまもなくの頃、会議や宴席で上座に座るのをためらった時期があったそうです。しかし上司が役割に過ぎないと気づいてからは、ためらうことの滑稽さに赤面し、それ以上に、自分がためらうことで一人ひとりの居場所や役回りまで混乱させてしまったことを反省した、とのことでした。上司はためらわず上座に座り、一番に発言しなくてはなりません。なぜなら、そういう役割だからです。

そしてもう一つ、挨拶をしっかり定着させることです。挨拶の下手な集団は、なかなかまとまりません。学生時代、私はボー卜部でしたが、出艇前のクルーの挨拶の仕方で、テームワークの良し悪しがすぐに分かりました。挨拶を押さえるのも、上司が部下をまとめる一つのコツです。

【勤かす】

人を「動かす」には、自分が担当する組織の目標を、率直に、腹を割って、何度も確認するのがコツです。「あなたのしたいことは何ですか」「あなたのしたいことを実現します」というのは、聞こえがいいけれども、上司としてはどうも無責任です。まず自分の腹を割って目標を話すことから始めないと、組織は方向を失います。
もちろん、組織の目標だけが絶対ではありません。一つのたたき台に過ぎませんから、一人ひとりの目標（夢）と組織の目標とのすり合わせがいつも必要です。動かすコツは、組織のやるべきことと、個人のやりたいことを結び付けていく、あるいは一致させていくという、まさに目標管理、ということです。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ（山本五十六）」という率先垂範型のリーダー論もあります。率先垂範と目標管理は、そのときどきで上手く使い分けるのが良いと思います。

【育てる】

人を「育てる」には、それが上司の役割だと強く、深く、しっかり自覚することが必要です。この自覚のない上司は、組織にとってのお荷物になり兼ねません。保身に走る人ほど、できる部下を潰してしまうからです。

ある部長が重役に呼ばれ「君を役員にしようと考えている。ついては、君と同じくらい仕事のできる部長候補を推薦してくれ」と言われました。その部長は、喜色満面で「私ぐらいに仕事のできる部下はいません」と答えたところ、「それなら仕方がない。昇進は取り消しだ」と言われたそうです。部下の育成に怠慢であったと判断されたわけです。

さて、実際に職場で部下を育てるコツは、ロを出すか、任せるか、の見極めを上手くつけることです。私なぞは生来の短気がたたって、ついつい口を出しがちですが、是非とも改めたいと思っています。皆さまは如何でしょうか。

次回は部下の役割について、考えてみたいと思います。