介護道楽・ケア三昧

■心医者徒然談義・職場のメンタルヘルスを考える（第３話）
部下の役割　N0.1
東北ジャーナルH16年10月号

部下の役割は、組織の「目的」を理解して、まとまり、動き、育つこと、ですから、まずは組織の目的を理解することが肝心です。目的を押えた部下は、上司と同じ次元に立つことができますし、もしも上司のやり方がまずければ、直言して上司を超えることもできます。･･･

今回は、部下の役割について考えてみます。

【問】部下は偉くないのか。

【答】偉さとは関係ない。

部下というのも、上司と同じように、組織のなかで期待される一つの「役割」に過ぎません。ですから部下であることに臆したり、むやみに反抗したりするのは、どちらも当たりません。では【問】部下の役割とはなんてしょうか。【答】上司の役割を補完すること。

上司の役割は、「目的」にそって人をまとめ、動かし、育てること、と前の号に書きました。すると部下の役割は、「目的」を理解して、まとまり、動き、育つこと、です。

目的を言わず、人をまとめず、勣かさず、育てない上司が、上司として不足であるように、目的を聞かず、まとまらず、勤かず、育たない部下は、部下として不足です。組織に属する（給料をもらう）以上、そうした互いの「役割」を承知しなくてはなりません。

「自分を捨てきれない人間は、会社を捨てるか、自分が会社に捨てられる」といいますが、まず自分を捨てて役割を履行することが、良し悪しの次元を超えて、職場には求められるのだと思います。

それなら、【問】上司と部下の関係は、役割関係だけの味気ないものなのか。【答】否。互いの役割を誠実に務めながら目的を成したときに、個人的な深い満足と信頼関係が築かれる。人間同士の信頼関係とは、本来そういうものではないでしょうか。戦友は戦争をとおして、家族は養育や介護をとおして、上司と部下は仕事をとおして、互いの役割に務めながら少しずつ絆を太くするのだと思います。

部下の役割は、組織の「目的」を理解して、まとまり、動き、育つこと、ですから、まずは組織の目的を理解することが肝心です。目的を押えた部下は、上司と同じ次元に立つことがてきますし、もしも上司のやり方がまずければ、直言して上司を超えることもできます。

【まとまる】

さて「まとまる」には、単純ですが、乱さないだけで十分です。しかし、自分自身を振り返ると、つぎの二つの原因で職場を乱してしまうことがあったように思います。一つは、つまらぬ＜プライド＞です。も
う一つは、時期を待てない＜短気＞です。

たとえば、こんなことがありました。国立療養所に病棟医長として勤めていたころ、痴呆の患者さんを温泉に連れて行こうとしたら「病棟外ではリハビリが算定できなくなる」と事務にストップをかけられて、
カチンときました。医長がなんて事務なぞに、と医者のつまらぬプライドがはじけ、また生来が短気ですから、厚生省の担当課に電話で直談判です。結局、算定して構わない、という回答をもらって出かけました。が、その後、管轄の（たしか）医務局から「お前のところの医者は威勢が良すぎる」と院長（上司）に指導がきて、大いに絞られました。「事を大きくしなくてもやれるなら、それに越したことはない。な
ぜなら、後がやりづらくなるから」と言われて、成るほどと反省したものです。この上司は、なにかにつけ私をかばってくれましたが、私の短慮な行動によって､その後はかばい辛くなったようでした。

プライドと短気が、ときに職場を乱す原因となることにも気づいておくほうが、損は少ないと思います。

次回は組織の中で「動く」「育つ」ときのコツについて考えてみたいと思います。