2006年12月27日

「物忘れ外来」のこと(第1話)

心医者徒然談義 「もの忘れ外来」のこと(第1話)
東北ジャーナル メディカルチェック

・‥薬のケアのレベルが以前よりも進歩したのに比べて、痴呆に対する誤解は、いまだに少なくありません。例えば「年をとればみなボケる」という誤解。・・・

 明けましておめでとうございます。
「いずみの杜診療所」の山崎です。
当院は内科と神経科のクリニックですが、「もの忘れ」「うつ病」「神経症」「依存症」といった心の相談を予約制でお受けしています。
相談に訪れる一人ひとりの想いに耳を傾けながら、その人が今よりも少しだけ楽になれるような治療とカウンセリングに努力してきました。
今年いっぱい誌面をお惜リして、その一端をご紹介して参りたいと存じます。

 最近は「脳ドック」や「もの忘れ外来」を標榜する病院も増えてきました。私が大学病院で「もの忘れ外来」の開設に携わったのは、平成2年です。そうした外来は、日本中でもまだ2~3ケ所しかありませんでした。
介護保険は平成12年に始まりましたが、ちょうどその十年前です。当時は、痴呆を診断しても有効な薬がなく、また、痴呆のケアに欠かせないデイサービスやグループホームといった社会資源もまったく不足で、正直なところ「診断していったい何になるのか」と苦々しく自問することもありました。
しかし、薬にしてもケアのレベルにしても、今は隔世の感があります。多少の批判はあるとしても、この十年余、製薬会社も厚生省も、それなりには頑張ったな、と率直に思います。
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 薬のケアのレベルが以前よりも進歩したのに比べて、痴呆に対する誤解は、いまだに少なくありません。
例えば「年をとればみなボケる」という誤解。引退や転居、配偶者の死など、環境の変化や精神的なショックをボケの原因と考えるのも、(そう考えたくなる気持ちはわかりますが)間違いです。
「右脳を働かせればボケない」とか「社会活動に積極的に参加すればボケない」という人もいますが、科学的な根拠はありません。レーガン大統領もアルツハイマーになりました。

 痴呆というのは症状のことで、病気の名前ではありません。いろいろな病気で発熱という症状が出るように、さまざまな病気で痴呆という症状が出ます。
ですから「痴呆は予防できますか」とか「痴呆は治りますか」という質問には、「痴呆の原因となった病気次第です」とお答えするしかありません。
 痴呆は、悩に影響するあらゆる病気で起きますから、病気がちとなる高齢者ほど多くなります。
痴呆の率を男女別・年齢別に見ると、

男性では
  2.0パーセント(65~69歳)
   ↓
  3.9パーセント(~74歳)
   ↓
  7.1パーセント(~79歳)
   ↓
 12.8パーセント(~84歳)
   ↓
 22.1パーセント(85歳~)のように増加し、

女性では
  1.1パーセント(65~69歳)
    ↓
  3.3パーセント(~74歳)
    ↓
  7.0パーセント(~79歳)
    ↓
 15.6パーセント(~84歳)
    ↓
 29.8パーセント(85歳~)のように増加します。

痴呆はだれにでも起こり得るものではあるものの、この数値を見れば、「年をとればみなボケる」わけではないことが分かります。

 痴呆の原因となる代表的な病気と、その予防や治療については、次回からご説明して参りましよう。

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Posted by 清山会スタッフ at 02:03│Comments(0)「もの忘れ外来」のこと
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