2006年12月27日

(第3話) 脳血管性痴呆症(2)

心医者徒然談義 「もの忘れ外来」のこと(第3話)
脳血管性痴呆症(2)
東北ジャーナル メディカルチェック

脳血管性痴呆の人は、身体の衰えの割に、痴呆は案外ひどくありません。…

<脳血管性痴呆のケア>
 脳血管性痴呆の人は、身体の衰えの割に、痴呆は案外ひどくありません。これは、脳深部の血流が落ちても、神経細胞のある脳表層血流が保たれているからです。

 ちょっと乱暴な例えですが、脳の表層(皮質)には発電所(神経細胞)があり、深部(白質と基底核)には電線(神経線維)と変電所(神経細胞)があります。変電所からまた電線(脊髄の神経線維)が伸びて、電力(脳の命令)が手足まで到達するわけです。

 ですから、深部の血流が落ちる脳血管性痴呆は、発電所から電力を送ろうとしても電線や変電所の故障でうまく電流が流れない状態といえます。いろいろな想いを表現したくても、表情や身体が思い通りにならず、情けなさや悔しさ、もどかしさに悩まされます。痴呆扱いされたりすると、深く傷ついて気力がなえたり、反動で怒りっぽくなったりもします。脳血管性痴呆の人は身体の衰えから想像されるほどには痴呆がひどくないことに配慮して、ケアに当たる必要があります。

<予防>
 高血圧や糖尿病、高脂血症、心疾患、飲酒・喫煙習慣など、動脈硬化を促進する生活習慣病を予防し治療することが結果として脳血管性痴呆の予防につながります。

 前回登場した沢田さんは、若い頃から精力的な人で仕事も遊びも、存分にこなしてきました。家庭では亭主関白で、職場では親分肌です。しかし、実は気遣いのひどく細やかなところがあり、体裁と見栄にとらわれて自分の本音が言えなかったりもする、どちらかといえば、やせ我慢してでも「頑張る」タイプの人でした。

 四〇代のころは晩酌三合程度、タパコは一日三〇本から四〇本。ただし、外で飲むと勢いにまかせて呑んでしまい、健康診断は肝機能のガンマ(γ-GTP)が高いと注意されることが多く、血圧やコレステロールで引っかかったこともありました。しかし、NOを言えずに仕事を引き受けるタイプだったので、忙しくて身体のことをいたわる余裕はなく、気にしながらも結局は放置してきたのです。

 生活「習慣」病の予防は、習慣を変えることです。しかし、頑張りすぎた心の歪みが、生活習慣の乱れを誘うことがあります。そして、そのようにして獲得された習慣は、心の歪みを修正しない限り、簡単には変わりません。

 江戸時代、小石川養成所の医者が書いた養成訓にこんなのがあります。「養成は飢えることなく飽かずして、物おもわざる外はあらじな」。つまり腹八分目で、想い煩うことなかれ、ということです。身体の養生とともに、心の養生が説かれていることに注目したいと想います。

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Posted by 清山会スタッフ at 12:21│Comments(0)「もの忘れ外来」のこと
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